「腰が限界…」陸上貨物運送業に多い腰痛の原因とリスクとは?

腰が限界…」陸上貨物運送業に多い腰痛の原因とリスクとは? 腰痛予防
「陸上貨物運送業に多い腰痛の“本当の原因”、あなたは知っていますか?」

「腰が痛い…でもこの仕事を続けないと生活が…」そう思いながら働き続けていませんか?陸上貨物運送業における腰痛の発症率は非常に高く、放置すれば仕事の継続すら困難になる重大なリスクとなります。今回はその原因・リスク・対策の第一歩として、なぜ腰痛が起きるのかを解説していきます。

陸上貨物運送業は〇〇割の人間が腰痛になっている

厚生労働省のデータから読み解く腰痛の実態

全職業で最も多い“職業病”が腰痛。全体の約6割に上ります。特に運輸交通業では約8割が腰痛を経験しているという驚くべき実態があります。

さらに深刻なのが腰痛による休業者数の増加です。陸上貨物運送業だけで毎年500〜600人が4日以上の休業を強いられており、長期化する例も多数。29日以上の長期休業者が約4割、15日以上の休業が約半数にのぼります。

「まだ若いから」と油断できないのが腰痛の怖さ。30代でも発症率18%以上と高く、慢性化して“腰痛借金”となる前に予防策を知ることが大切です。

腰痛での休業者は毎年増加傾向で、500〜600人の作業員が腰痛によって4日以上の休業を余儀なくされています。さらに腰痛による就業不能は長期化しやすく、29日以上の休業者が4割、15日以上が約半数にのぼります。

運送業が腰痛になりやすい3つの原因!

①陸上貨物運送業は日常でのこの負担が大きすぎる(動作要因)

具体的な腰への負担

運送業の皆さんは毎日数十kg単位の重量物を運ぶことがほとんどですよね。当たり前ですが重量物を運ぶ時には腰(椎間板)への負担が大きくなります。具体的には以下の通りです。

危険水域とは椎間板を傷つけたりヘルニアになったりするほど強い力(約300kg以上)がかかっている状態。この状態が続くとぎっくり腰や椎間板ヘルニアといった腰の「2大事故」につながる可能性があります。

“パワーポジション”の重要性

先程の具体例でもあったように持ち上げる「やり方」でも腰への負担は変わってきます。

いわゆるパワーポジションで持ち上げると同じ荷物を持った場合でも腰への負担を減らすことが可能です。

パワーポジションのやり方

  1. 片足を少し前に出す
  2. 膝を曲げ、腰を十分に下ろして荷物を抱える
  3. 膝を伸ばすことによって立ち上がる

ひねる動作はあるあるのNG動作

また、運送現場では、「荷物を抱えたまま腰をひねってしまう」ことが頻出しています。このひねる動作も腰(椎間板)に不均等な力がかかり負担が大きいです。
ひねるの動作以外にも、前屈・中腰・後屈といった不自然な姿勢は極力避けるべきです。

②長時間の運転と悪い作業環境(環境要因)

なぜ「運転」が腰に悪いのか?

運送業では運転がつきものなため、長時間座っていることが避けられません。これは長時間の座位拘束となり、筋肉の血流阻害を引き起こし、一時的に力が出にくくなります。
この状態で荷物を持つと、ぎっくり腰や椎間板ヘルニアといった“腰での2大事故”を招きやすくなります。

また、運転は腰部に車両からの振動が伝わります。これは短時間であれば負担は少ないですが、長時間となると負担は大きくなります。この対策としては10度ほど背もたれを倒し、ややもたれ気味にすることで振動の衝撃を吸収し、腰負担が軽減されます。

作業環境の重要性

十分な作業スペースがあれば問題ないのですが狭い作業スペース、凹凸のある床は腰への負担が大きくなる原因となります。

まず狭いスペースの作業では、方向転換が十分にできず前述した「ひねる動作」に繋がりやすいです。また凹凸のある床で作業することで、バランスを保とうとして、腰を深く曲げたりなどの不自然な作業姿勢・急激な姿勢の変換につながり腰への負担が大きくなります。


広さや設備の配置を見直し、「ゆとりある仕事環境」に整えることが腰痛防止に効果的です。

③年齢・体力、健康状態(個人的要因)

もちろん、加齢による筋力や柔軟性低下、長年の積み重ね作業による蓄積疲労も腰痛リスクを高めます。

体格や体力に見合った重量を超える作業は腰痛を誘発する典型ケースです。見合った重量=男性は体重の約40%、女性はその60%でそれぞれ体重が70kgの場合は以下の通りです。

体重70kgの人に見合った重量
・男性(体重70kg): 70kg × 40% = 28kg
・女性(体重70kg): 70kg × 40% × 60% = 70kg × 24% = 16.8kg

これらの重量を超える場合は台車を使う、2人で持つことが推奨されます。


健康状態としては運輸交通業において、10年以上の経験者では約37%が腰痛を経験しています。元々腰痛がある人や腰痛だった人が上記の腰痛になりやすい原因を解決しないまま働くと、健康的な人と比べて腰痛の出現・悪化しやすいことは想像しやすいと思います。

“なぜ”腰痛になるのか?(解剖学的メカニズム)

腰痛の発生原因はさまざまですが、代表的なものとして以下の3つが挙げられます。

① 背骨のクッション「椎間板」への過剰な圧力

背骨の間にある「椎間板」は、衝撃を吸収する大切なクッションですが、前述した動作である前かがみや重い荷物を持つ動作で、強い圧力がかかります。

② 椎間板の“ズレ”と蓄積される「腰痛借金」

長時間の前かがみ姿勢を続けると、椎間板の内側にあるゼリー状の部分(髄核)が背中側へズレてしまうことがあります。

この状態が「腰痛借金」と呼ばれ、放置すればぎっくり腰や椎間板ヘルニアの原因となります。

③ 筋肉やじん帯への過剰な負担

背骨を支える筋肉やじん帯も、不自然な姿勢(前屈・中腰・ひねり)や重いものを持つ動作で負担が増えます。特に同じ動作を繰り返すことで、筋肉や骨の付着部に疲労が蓄積し、腰痛が発生しやすくなります。

放置すればこうなるーー腰痛が引き起こす3つの重大リスク

リスク①:仕事効率の低下

「腰痛借金」が蓄積すると、痛みや不快感で集中力が落ち、ミスや遅延が増加し、生産性ダウンに直結します。

リスク②:休業・入院

腰痛が悪化すると、業務に支障をきたし、休業や入院に至るケースが後を絶ちません。

初めに書いた通り実際、陸上貨物運送事業では毎年500〜600人腰痛によって4日以上の休業を余儀なくされています。

さらに深刻なのは休業期間の長期化です。

4日以上休む人のうち、約4割が29日以上もの長期休業に。15日以上の休業全体の約半数にものぼり、仕事復帰までに長期間を要することがわかっています。

また、ぎっくり腰や椎間板ヘルニアといった重症例では入院が必要となるケースも珍しくありません。治療から復帰まで数ヶ月かかることもあり、家計や生活への影響も無視できないリスクです。

リスク③:最悪の場合、退職

また最悪の場合、慢性化した腰痛は身体機能を低下させ、元の業務遂行が困難になる場合があります。
特に高年齢層に起こると復帰がさらに難しくなり、仕事を辞めざるをえない事態になる可能性が高くなります。
個人としてはもちろん、運送業の人材不足がある社会全体としても、運送業の腰痛は重大な「労働損失」です。

まとめ:だからこそ今すぐ予防と対策が必要です

腰痛は単なる“個人のせい”や“年齢のせい”ではなく「そのうち治る」でも済まされません。
適切なやり方(パワーポジション)、正しい環境対応(座面角度・スペース)、そして日々のセルフケアが防御の要になります。

治療よりも予防が断然望ましく、腰痛借金をためる前に今すぐ取り組みましょう。

ただしーーこれを知っているのは、今この記事を読んでいる“あなた”だけかもしれません。

ぜひ、この情報をあなたの職場の仲間にも教えてあげてください。

「腰痛を防いで、長く働ける未来」のために。次回は 『腰痛を防ぐための具体的なやり方・現場でできる工夫』 を紹介します。ぜひご期待ください。

このブログ記事は、以下の公的資料・専門文献をもとに執筆しています。
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