【腰痛で仕事を辞めない未来へ】僕が産業理学療法士になった理由

産業理学療法士

あなたは「腰痛で仕事が辛い…」「このまま働き続けられるか不安」と感じていませんか?
病院で理学療法士として働く中、重い腰痛を抱え「仕事に戻れるのか不安」と苦悩する患者さんとの出会いが、僕のキャリアを大きく変えました。病院での「治す」治療だけでは、彼らの抱える根深い悩みを根本的に解決できない――そう痛感したのです。
この経験から、僕は「腰痛で仕事を辞めない未来」を創るため、産業理学療法士という新しい道に進むことを決意しました。この記事では、なぜ僕がこのキャリアを選んだのか、そのきっかけと、働く人々の健康を支えることへの熱い想いをお伝えします。

産業理学療法士とは?労働者の健康を守る産業保健分野の専門家!

産業理学療法士とは?働く人の“現場の健康”を支える存在

まず「産業理学療法士って何するの?」となる人も多いと思います。
産業理学療法士とは文字通り産業理学療法を提供する人のことで、日本産業理学療法研究会によると、産業理学療法は以下のように定義されています。

「理学療法士が、産業医学を基礎に専門的知識を生かして、働く人々の心身機能の維持・改善に努め、健康で安全に働くことができる快適な職場環境の形成と労働生産性の向上を促進する活動である。」
出典:日本産業理学療法研究会

理学療法士が現場に介入する具体的な取り組みとは?

  • 健康に働ける作業環境の調整(作業環境管理)
  • 従業員にあった体の使い方や作業方法の提案(作業管理)
  • 身体機能の維持向上(健康管理)

これらを通して労働者の腰痛・転倒予防など労働者の健康を守る役割があります。

さらに、この活動は労働者だけにメリットがあるわけではなく、労働者の健康を守ることで企業の健康経営に繋がり一石二鳥となります(健康経営についてはまた記事を書く予定です)

実際にアメリカやオーストラリアでは製造業・物流・鉱業などの一般企業に理学療法士が介入しています。

腰痛に悩む一人の労働者との出会いが、僕を「予防医療」へ導いた

腰椎ヘルニアに苦しむSさんとの出会い

新卒から病院に就職して3年目の秋に、Sさんという患者さんと出会いました。Sさんは重度の腰椎椎間板ヘルニアで手術を受けられ、私が術後のリハビリを担当させていただくことになったのです。手術自体は成功したものの、Sさんの腰の痛みはなかなか改善せず、病院生活にも支障が出ていました。

「仕事に戻れるのか?」という切実な問いが教えてくれたこと

リハビリを続ける中で、Sさんは徐々に僕に心の内を打ち明けてくれるようになりました。Sさんの職業は運送業で、長年にわたる重い荷物の運搬や長時間運転が、腰に大きな負担をかけ、今回のヘルニアの原因となったことは明らかでした。

Sさんにとって仕事は生活の基盤であり、やりがいを感じるものでしたが、痛みとの葛藤は深刻。Sさんは「本当に自分はまた職場に戻れるのだろうか?」「この痛みが引いても、またすぐに再発してしまうのではないか?」という不安を何度も口に出していました。

「治療」では救いきれない現場のリアルと、予防医療という視点

Sさんが抱える「痛み」と「仕事への復帰」、そして「再発への不安」という根深い葛藤を目の当たりにし、僕は病院での「治す」ことに特化した治療だけでは足りないと感じました。Sさんの長期的な健康維持と安心して働き続ける未来を完全に解決しきれないのではないか、という強い課題意識を持つようになりました。

これは、単に身体機能の回復だけでなく、「その人が働く環境や生活全体の中で、どうすれば健康を維持し、再発を防げるか」という、より包括的な視点からのアプローチが必要であるという、僕の「予防医療」への考え方の原点となったのです。

産業理学療法士を目指した理由

正しい動作を知らずに働く現実――それは慢性的な腰痛の温床だった

Sさんのリハビリが進むにつれ、腰痛の原因となる荷物の持ち上げ方など、問題のある動作が明らかになりました。Sさんは正しい動作を「正しい荷物の持ち方なんて教えてもらったことなかった」と驚き、彼の周囲にも同様の指導を受けたことのない人が多いことがわかりました。

日本に足りない“マニュアルハンドリング教育”との出会い

その日の昼休みネット検索で、海外では徹底される「マニュアルハンドリング教育」が日本ではほとんど浸透していないという事実が分かり、これは労働環境における根深い社会問題だと強く感じました。

働く人の未来を守りたい――僕が「産業理学療法士」の道を選んだ理由

このような社会問題から、理学療法士が労働者に対してどのような貢献ができるのかを深く考えるようになりました。その中で、「産業理学療法」という概念に出会いました。これは退院を控えた患者に対して、日常動作や職場環境に即した指導を行うことに大きなやりがいを感じていた僕にとって、まさに自分の想いと完全に重なるものでした。

こうして、僕は理学療法士として新たな道ーー産業理学療法士としてのキャリアを目指すことを決意したのです。

まず身近な従業員の腰痛予防・転倒対策から

企業との連携を目指すも、最初の一歩が見えなかった

理学療法士として病院で働く中で、「企業と連携して労働者を支える」という新たな目標を見つけたものの、いざ始めようとしても、何から手を付けて良いか分かりませんでした。
特に、企業にアプローチするには実績がなく、具体的な方法も見えていませんでした。

「まずは身近な職場から」――転機となった一言

そんな時、産業理学療法研究会・元会長の高野賢一郎先生のインタビュー記事に出会いました。そこには、「まずは身近な職場から始めなさい」という言葉がありました。
この一言が、僕の背中を大きく押してくれたのです。

現場の仲間への取り組みで見えた“可能性”と“手応え”

実際に、同じ病院に勤務する介護士や看護師、検査技師などに対して、マニュアルハンドリングの指導を行う取り組みを始めました。上司の理解も得られ、少しずつながら手応えを感じることができました。

これからの展開と取り組み――産業理学療法士としての次の一歩

①:働く人へ、ブログで「知識」を届けたい

今後はこのブログを通じて、働く人々にとって役立つ知識や気づきを、直接届けていきたいと考えています。

病院という限られた空間を超え、より多くの方に「予防の大切さ」や「腰痛との正しい付き合い方」を伝えることで、一人でも多くの方が健康的に働き続けられる社会に近づけるのではないか――そんな思いを胸に、筆を取っています。

「治療」よりも前に、「正しい知識」が届いていれば防げたはずの痛みがある。

その現実を知っているからこそ、これからも現場視点でリアルな情報を発信し続けていきます。

②:企業向けセミナーで“予防の輪”を広げていく

加えて、企業向けの腰痛予防・転倒防止セミナーの開催準備も進めています。

現場で働く従業員の皆さんが、自分の身体を守る正しい知識と技術を得られる場を提供すること――それが、産業理学療法士としての僕の使命のひとつだと感じています。

特に、運輸・介護・製造など、身体への負担が避けられない職種では、少しの工夫や学びが事故や慢性痛を未然に防ぎ、結果的に働き方や企業全体の生産性にも大きく貢献します。

セミナーを通じて「予防は特別なことではない、日常に組み込むものだ」という視点を広めていければと考えています。

③:資格取得で広げる視野――「衛生管理者一種」への挑戦

さらに今、僕は「衛生管理者一種」の資格取得にも取り組んでいます。

この資格は労働安全衛生の観点から職場環境を支える国家資格であり、産業理学療法士として活動の幅をさらに広げるためには欠かせないものと感じています。

リハビリの知識だけでは届かない「環境要因」や「法制度」の理解を深めることで、より総合的に“働く人の健康”を守る専門家として、企業や現場の中で価値を発揮できる存在を目指しています。

最後に

「腰痛で仕事を辞めない未来」を実現するためには、身体のケアだけでなく、働き方や職場環境そのものを見つめ直す視点が欠かせません。

まだ現場での取り組みは始まったばかりですが、小さな行動がやがて大きな変化につながると信じています

この記事が、あなたやあなたの周囲の方々にとって、気づきや行動のきっかけになれば嬉しく思います。

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