トラック運転手・荷役作業に多い腰痛を、“やり方の工夫”で防ぐ!現場で実践できる改善ポイントを画像付きでご紹介します!
腰痛を防ぐには“作業のやり方”が一番効果的
腰痛予防は“やり方”から始まる――なぜ作業が原因なのか?
腰痛予防のカギは、普段の作業の「やり方」そのものにあります。なぜなら、腰痛が発生する原因の多くは、作業時の動作や姿勢のクセに直結しているからです。
たとえば、荷物の持ち上げ方ひとつとっても、腰(椎間板)にかかる負担は大きく変わります。腰を曲げて重い物を持てば、一気に危険水域(300kg以上の圧力)に達し、椎間板を傷つけてしまうことも珍しくありません。
だからこそ、「腰に優しいやり方」を身につけることが、腰痛予防への最短ルートとなるのです。
“腰に優しい動作”で負担はどこまで減らせるのか?
具体的にどれほどの効果があるのか、数字で見てみましょう。
例えば、体重70kgの人が20kgの荷物を持つとき、
腰を曲げて → 約327kg
パワーポジション → 約241kg
この差は約80kg。ちょっとの工夫でこれだけ変わります。
作業のやり方を変えるだけで未来が変わる――運送現場の事例
「今まで通りの“やり方”で続けてしまう」――これが、腰に負担を積み重ねてしまう最大の原因です。
✅ たった「1つの間違ったやり方」でも、腰への負担は何倍にも膨らむ
✅ 「少し違和感がある…」その積み重ねが、ある日突然“腰痛借金”に化ける
✅ そして最悪の場合、「仕事を休まざるを得なくなる未来」が待っているかもしれません
このリスクは脅しではなく、すでに陸上貨物運送業で実際に起きている現実です。
腰痛で4日以上の休業を余儀なくされている労働者は、毎年500〜600人にものぼります。
だからこそ、次にお伝えする「なぜ“やり方”が効果的なのか?」という理由を知ってください。
腰痛予防の「本質」に迫りつつ、“今この瞬間から変えられるポイント”を一緒に考えていきましょう。
なぜ“作業のやり方”が腰痛予防に効果的なのか?
腰の構造から見た腰痛の仕組み
腰痛の原因は一つではなく、背骨・椎間板・筋肉やじん帯が複雑に関係しています。
その中でも 「椎間板」 というクッションは、腰痛発生に直結しやすい部位です。体重70kgの人は普段リラックスして立つだけでも 約70kg の負荷がかかっていますが――
腰を屈めて20kgの荷物を持つと、なんと約327kgもの圧力が腰にかかる。
この過剰な圧力が 椎間板内部の“髄核”を後ろ側へズラし、蓄積される状態 が「腰痛借金」です。
この 腰痛借金 が積もり積もれば、ぎっくり腰や椎間板ヘルニアなど、いわゆる“腰の2大事故”が待っています。
だからこそ――
日々の作業のやり方そのものを改善することが、腰痛リスクから自分を守る「最短ルート」になるのです。
環境や体質はすぐに変えられない。でも“やり方”ならあなたが変えられる!
腰痛の原因には、作業環境や個人の体質 など、自分の力ではすぐに変えられないもの もあります。
例えば…
- 職場の作業スペースの狭さ
- 車両の振動や寒冷環境
- 年齢や筋力といった個人差
こうした “外的な要因”は時間やコストがかかる問題。
でも――やり方(動作)なら今日から変えられる。
例えば
- 急に重い物を持たない
- 無理をせず2人以上で持つ
- 補助具やリフターを使う
これらの “ちょっとした意識”の積み重ねが、大きな結果に繋がります。
変えられないものを嘆くより、 変えられるものから先に取り組む。 それが腰痛予防の本質です。
変えないままの作業が“未来のリスク”を膨らませる
「今まで通りのやり方」で続けてしまうこと――実はこれが、一番危険な選択です。
✅ ほんの少しの“クセ”で、腰への負担が何倍にも増える
✅ 「ちょっとした腰の違和感」が、ある日突然「ぎっくり腰」や「椎間板ヘルニア」に変わる
✅ そしてその時、仕事を「休まざるをえなくなる」未来が待っているかもしれません
これは脅しではなく、多くの現場で実際に起きていることです。
だからこそ――
「これから紹介する“やり方の工夫”」こそが、未来の腰痛を防ぐための“備え”なのです。
次にご紹介する具体例を、ぜひ今日から取り入れてみてください。
これならできる!腰痛を防ぐ“作業のやり方”の工夫
まずは動きから → 正しい荷物の扱い方を身につけよう
腰痛予防の基本は、荷物の正しい持ち方を身につけることから始まります。
特に陸上貨物運送業では、毎日のように重量物を扱うことが多く、その1回1回の積み重ねが腰への負担となります。何気なく持ち上げるその動作が、将来の腰痛リスクを高める原因になっているのです。
✅ パワーポジションを身につけよう

その他のポイント
- 腰を十分に落として荷物を抱える
- お尻と膝の力で立ち上がる
- 下腹に力をいれる
この姿勢で持つことで、危険水域(椎間板圧縮力300kg以上)を回避し、腰への負担を軽減します。

さらに、「荷物はできるだけ体に近づける」「無理にひねらない」「前屈みで持たない」を徹底することが腰痛リスク低減に直結します。
環境も味方に → 道具や作業環境の工夫
いくら作業姿勢が正しくても、作業環境が悪ければ腰痛は防げません。
✅ おすすめの工夫例
- リフター・コンベヤ導入で作業を省力化
- 重量制限を設定(男性は体重の約40%、女性は約24%)
- 凹凸の少ない床・滑りにくい素材の導入
- 温度管理(防寒具や暖房)で冷え対策
- 明るい照明でつまずき防止
- 座席の角度調整やクッション導入で車両振動対策
特に車両運転時の座席角度は10~30度後ろに倒すが目安。腰への負担軽減に効果的です。

自分の体を守る → ストレッチと正しい知識の習得
腰痛予防のために環境を整え、動きを改善しても、知識がなければ効果は半減します。
✅ 知識として必須の内容
- 正しい作業姿勢や補助具の使い方
- 荷役時の注意点
- 腰痛の仕組みや原因
さらに、「これだけ体操」などの腰痛予防体操を学び、実践することが効果的です。

注意点としては、痛みが足に響く場合は即中止し、医療機関の受診が必要です。
無理をしない → チーム連携と荷主との協力も必要
個人の努力だけでは限界があります。職場全体での腰痛対策の意識共有が不可欠です。
✅ 具体的な取り組み
- 重量物は2人以上で運ぶ体制の徹底
- 事前に荷役作業の内容を確認し、必要に応じて荷主と協議
- 安全衛生協議会などで作業環境を改善

また、高齢の作業員に対しては特に配慮が必要です。年齢に応じた作業方法を整え、無理な作業をさせない体制づくりが必須です。
まずは今日から1つ取り入れてみよう
まずはこれから ! 今日からできる1つの工夫を選ぼう
腰痛予防における最初の一歩は「小さな習慣の積み重ね」です。
「全部一気に変えるなんて無理だ…」と思っている方も多いでしょう。ですが、それで構いません。まず今日から次の1つだけ取り組んでみてください。
✅ おすすめの最初の1つ
- 荷物を持ち上げる時に「パワーポジション」を意識する
- 長時間運転後、これだけ体操を1回入れる
- 荷物を持つときに“ひねり動作”をやめるだけでもOK
たったこれだけで、将来の腰痛を防ぐ「貯金」になります。
職場でも広めて !仲間と一緒に腰痛予防に取り組もう!
腰痛予防は、あなた1人の努力だけでは限界があります。
陸上貨物運送事業における休業4日以上の労働災害の約7割が荷役作業中に発生しており、その多くが荷主等の事業場で発生しているという実態があります。
だからこそ、職場全体で取り組む姿勢が必要不可欠です。
さらに――
個人だけでなく「仲間同士で声を掛け合うこと」が、作業環境そのものの改善にも繋がります。
✅ 仲間に伝えたいポイント
- 正しい荷物の持ち方
- 重い荷物は1人で無理せず2人以上で持つ
- 狭い作業スペースや床の凹凸など、「危ない」と思うことは会社にも共有する
声が集まれば「設備改善」「作業動線の見直し」「道具の導入」などにもつながりやすくなるのです。
「腰痛を防いで長く働ける未来」のために――
まずは今日、あなたから動き出してみましょう。
【次回予告】隙間時間でできる腰痛予防エクササイズも紹介します!
次回は、忙しい現場でも取り入れやすい「隙間時間エクササイズ&ストレッチ」をご紹介します。
道具なし・その場でできる簡単メニューをお届けしますので、ぜひご期待ください。